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2023-08-05 (Sat) 09:53

【ホラーテラー】[ぐるぐる] … 霊感の強い友人Kに「今まで生きてて一番怖かった体験は何か?」と訊いてみた

僕の友人にオカルティストで霊感もそこそこ強いKという奴が居る。
ある日そのKに、「今まで生きてて一番怖かった体験は何か?」と訊いてみた。
すると、彼は視線を上の方に据えしばらく考えた後、
「んー……そら、ぐるぐるの時だな」と言った。

「ぐるぐる?」

「そー。ぐるぐる」

以下はKから聞いた話になる。


十年くらい前の話だ。
俺が小学五年生の時、当時通ってた小学校内で妙な噂が流れていた。
噂は学校からそう遠くない場所にある南中山という山に関してだった。
『あそこの山には、ぐるぐる様が出るぞ』
話が広まり出したのは夏休みが明けた九月のことで、噂は火災時の煙の様にまたたく間に校内中に広がった。
何でも六年生達が夏休み中に南中山で肝試しを行い、そこで何かしら見たという話が出火元らしい。
多くの噂話や都市伝説がそうであるように、ぐるぐる様に関しても次々にボクも見たアタシも見たと目撃者は増え、ぐるぐる様を見た者は呪い殺されるだの、日にちが経つごとに話は膨らんでいった。

身長は子供大から数メートルまでばらつきがあったし、男か女かも証言者によって分かれた。
ただ、そんなバラバラな話の中にも共通点があった。
それは、目でも腕でも頭でも、ぐるぐる様は身体のどこかしらが回転しているという点だ。
名前が名前だからそこは外せないんだろう。
あと、ぐるぐる様は黒いらしい。

そんなこんなで盛り上がる周りを他所に、俺は噂とは無縁に至って平凡に過ごしていた。
当時の俺は、オカルトにはあまり関心の無い普通の子供だったのだ。
まあ、まだ十かそこらだ。目覚めるには幾分早い。怖がりだったし。
代わりに四つ歳上の姉貴が目覚めてた。

「あ、Kー。晩御飯終わったら、南中山行くからね。準備しとくんよ」

朝から雲が無くて、朝夕晩通してこれでもかと暑い一日だった。
時刻は午後七時前。夕飯を前に、姉貴は風呂に行こうとしていた俺を捕まえてそう言った。
「南中山?……ぐるぐる様?」
というか、それしかない。

「そう。ぐるぐる。面白そうじゃん。ぐるぐる」

姉貴はトンボを捕まえるときのように、俺の目の前で人差し指を回転させる。
しかし、何がそんなに面白そうなのか、当時の俺にはいまいちピンとこない。

「当然、父さん母さんには内緒にね。決行は夜の十一時。それまでにちゃんとトイレは済ませときなさいよ」

関係ない話だが、俺は小学校低学年の時に観た、『学校の階段』という子供向けのホラー映画でやらかしたことがある。
先程の姉貴の発言は、完全にそれを馬鹿にしたものだ。
実際のところ行きたくなかった。
しかし、ここで『行きたくない』 と言ってしまえば、更に馬鹿にされた上に、これ以降俺の呼び名が『根性無し』 になってしまうことは確実だった。
弟に拒否権は無かった。

結局、しぶしぶながら俺は「……おーけー」と答える。
姉貴は「それでこそ私の弟だ」と満足そうに頷いた。
今夜、ぐるぐる様に会いに行く。
おかげで、風呂で頭を洗う時に目を瞑れなかった。
目を瞑ると、イメージされたぐるぐる様の映像が頭の中でぐるぐる回るのだ。
俺は夕食の後、念入りに下腹部内のタンクを空にした。

夜中の十一時。俺と姉貴は子供部屋のある二階の窓から外に抜け出した。
母と、一緒に住んでる祖母はもう寝ているようだったが、父が未だ居間でテレビを見ていた。
身を屈めて動く。玄関近くの車庫から音を立てない様に自転車を取り出す時が、一番緊張した。
自転車は一台。警察等に気をつけながら俺が前でペダルを漕いで、姉貴は後ろの荷台に座っていた。
夜中だが外は暑かった。
俺も姉貴も半袖半パンだったが、後ろで姉貴が鼻歌交じりに風を受けているのに対して、俺は風は受けているが、同時に二人分の重量を乗せた自転車を漕いでいるのだ。

「重ぇー!あとアッつい。疲れた。しんどい」

「はいはい黙って漕ぐ漕ぐ。あと少しだから」

姉貴の口調は心底楽しそうだった。
南中山の入り口は家から自転車を漕いで二十分程の場所にある。
街の中にある小さな山で、子供の足でも二十分も上れば頂上につける。

「……実はね。お母さんが子供の頃にも一度、学校内で噂になったんだって。南中山にはぐるぐるがでるぞー、ってさ」

もうすぐ山に着く頃、姉貴が後ろからそう言った。
街中を流れる川に沿ったゆるい坂道にそろそろ息が切れていた俺は、返事をしなかった。が、姉貴は構わず続ける。

「それどころか、おばあちゃんも若い時に聞いたことあるって言ってたからね。ぐるぐるはそんだけ長生きな怪談話ってこと」

俺の背後から気味の悪い笑い声がする。それはまるで女の子らしからぬ笑い方だった。

「面白いと思わない?ぐるぐる。この街だけに伝わる都市伝説だし、長生きだし、それでいてずっと語り継がれてるわけじゃないし。途切れ途切れに、ある時期になるとぽんと顔を出すの。思い出したように。……ねえ、それって一体何でだと思う?」

完全にスイッチが入ってしまっているようだ。こうなるともう、非力な弟ではとめられない。

「え、俺?いや、そんなん分かんねーし知らねーし……」

「ま、そりゃそっか……。あ、心配しなくても、帰りは私が漕ぐからね。あー私すっごい優しいお姉さん!」

そりゃ帰りは楽だからだろ。ゆるくても下りだし。
しかしながら姉貴は、ぐるぐる様に関して俺より多くのことを知っているようだ。

しばらくして、ようやく俺と姉貴は南中山の入り口に辿り着いた。
車が入れる道もあるが坂が急で、ここから自転車は荷物になるだけだ。その辺の電話ボックスの隣に停めておく。

「「こりゃあ、なんちゅうやまじゃあ……!」」

二人で夜の南中山を見上げ、ここに来る人が必ず想像すると言われるお決まりのギャグをハモる。
と言っても、それほど何かが特徴的な山でも無いのだが。
唯一、ぐるぐる様が出るという噂を除いては。

車が通る道路の方は使わず、俺たち二人は歩行者用の階段を使って山を上り始めた。
俺らが自転車を降りたのが山の南側で、ぐるぐる様は北側の斜面に出るのだと姉貴が言った。
自転車を漕いで居た時にはずっと聞こえていた車の走行音が、今は木の葉の擦れ合う音や鈴虫の鳴き声に取って代わっている。
俺はずんずんと前を行く姉貴の後ろに、まるでコバンザメの様にぴたりと張り付いていた。
「今、小学校でも、ぐるぐるの噂って、流行ってんでしょ?」

不意に前を向いたまま姉貴が俺に尋ねる。
俺は「おう」とだけ返した。流行っていると言えば流行っている。
今話題のたまご型携帯ゲーム程ではないが。

「それって、どんな噂?」

「どんなって……、なんか、色んな話がごっちゃになってて……、よう分からん」

すると姉貴はぱっと振りかえり、俺の顔面にライトの光を当てて、
「そう、それなんよねー。私のとこでもよく話は聞くんだけど。最近のは、一貫性が無いって言うかねぇ。だから、お母さんとか、周りのじいちゃんばあちゃん達にも訊いてみたんだけど」

「姉ちゃん眩しい眩しい」

「出来るだけ多くの話を集めてさ。集計してみたわけ。そしたらある程度特徴が分かったんよ。例えば容姿とか居場所とか、あと挙動ね」

「眩しいって」

姉貴は俺の話を聞いてくれない。

「容姿は知れたとおり。真っ黒で、ぐるぐるな身体。片腕は無し。とあるおじいちゃんなんかは、黒いのは火傷の跡だって言ってたけど……。場所はさっき言った北側の斜面ね。挙動は、特に何をするわけでもない。人を呪ったりはしないし、追いかけて来る訳でもない」

「まぶ……」

「ただ、姿が異様なだけ。怖さはあるけど危険では無いから。

だから、世代間の間でちゃんと伝わって行かないのかもね。その場だけで終わっちゃうって言うか。……おっと?あー、めんごめんご」

姉貴はやっと懐中電灯を俺から逸らしてくれた。
その間俺はずっとサーチライトに照らされた怪盗ルパンみたいな体勢をしていたわけだが。
「あんたはその辺どう思う?」

俺はまた返答に窮してしまう。当時の俺は基本的に姉貴に付いていけてなかった。

「……ってか俺、ぐるぐる様の姿知らないし」

「あれ、そうなん?それじゃあ、見てからのお楽しみってことね」

そう言って、また姉貴はずんずんと階段を上って行った。
階段の途中で俺たちは山をぐるりと回る横道に逸れて、山の北側へと回った。

しばらく歩くと、細い道から少し開けた場所に出た。姉貴がライトの光を左から百八十度、ゆっくりと右へと回す。

「ここだね」と姉貴が呟く。辺りは靴を隠すくらいの高さの雑草と、うっそうと茂るナラの木に囲まれていた。

「……なあ、見える?」

俺は恐る恐る尋ねる。

「いたら見えるでしょ。私も、あんたも」

一寸先も見えないほどではないが、辺りは大分暗かった。
街の明かりも星の光も、頭上まで伸びる木々の枝や葉に遮られ、ここまで届いてるのはごく僅かだ。
虫の鳴き声。木々の囁き。目はラク出来るが、耳は忙しい。

「……今日はお留守かな?」と、辺りを見回しながら姉貴が呟く。

「寝てるんじゃね?」と言いながら、俺は若干ほっとしていた。

その時、ふと姉貴の照らすライトの光が白っぽい何かを浮かび上がらせた。
危うく飛び上がりそうになるが、それは石だった。何枚かの平たい石が縦に積まれ、小さな塔の様になっている。
高さは俺の背の半分程だった。

「……あれ何?」

「たぶん、お墓。名前が彫ってあるわけじゃないだろうけどさ。……供養塔だね」

訊いといて何だが、姉貴からしっかりした返答があったことに俺は驚く。

「誰の墓?」

「ん?いっぱい」

姉貴はこともなげに言ったのだが、俺にはその意味が良く分からなかった。

「だから、個人のお墓じゃなくて。そーねぇ……。ここの、南中山にはね。昔、戦争中に死んだ、身元の分からない人たちの遺体が埋められてるから。いっぱい。言うたらさ、この山自体がお墓なんよ」

思わず足元を見る。だとしたら俺たちは今、堂々と墓を踏んづけていることになる。

「で。私は、それを確かめに来たわけなんだけど……」

「あえ、何が?」

「んーん。何でもない。なんか、今日は出てこないみたいだし。ぐるぐる。だったら、ここに居ても意味は無いし」

帰ろうか、と姉貴は言う。俺は喜んで賛成した。朝までここに張り込むだなんて言われたらどうしようかと思っていたのだ。

「でも、もと来た道を戻るのはつまらないから、このまままっすぐ、山を一周しようか」
姉貴の提案に、帰れるなら何でも良い俺は素直に首を縦に振る。
そうして、また姉貴が前を行く形で俺たちは歩きだした。

「なぁ、帰りは姉ちゃんが自転車漕ぐんだろ?」

「ぐるぐる見れなかったから、やっぱりあんた漕いで」

「おい何だよそれー。……、……え、マジで?」

それは積み上げられた石の前を通った時だった。
ふと視線の端に何かが居た気がした。
帰れると思ってすっかり気が抜けていた俺は、疑問を抱く前にそちらの方を向いてしまった。
石の横に何かが居た。
最初は猪か何か、獣かと思った。
少量の水で溶いた墨をぶちまけたかのような暗闇の中で、そいつは確かにこちらを見ていた。
身体が固まる。しかし無意識に前に居る姉貴の服を引っ張っていたらしく、姉貴が振り向く。
何か俺に文句を言おうとしていた様だが、それが口から出て来る前に姉貴も俺が見ている何かに気がついた。
ライトの光がそいつを照らす。

ぐるぐる様。

俺の聞いた噂では、身体のどこかが回転しているから、ぐるぐる様だと言っていた。
だが違った。『身体のどこか』 では無かった。全部だ。
例えば、こちらを向いてまっすぐ立った人間を一本の棒と見る。
その棒の腰辺りを正面を向かせたまま、向かって左に曲げる。胸の辺りでもう一度同じ方向に曲げる。首も曲げる。
まるでカタツムリの殻の様に、コーヒーに垂らしたクリームが渦を巻く様に、ぜんまいの様に、
そいつの身体は頭を始点にして渦を巻いていた。
だから、ぐるぐる様なんだ。
頭と思しきモノが膝の横にあった。
渦の外側はあまりに急激な角度で曲げられているため、所々黒い皮膚が裂けて、骨やら肉やら中身が飛び出している。
更に、ぐるぐる様は片方の腕が無かった。残った手は、バランスの悪い身体を支えるため地面についている。
身体のほぼ全身が黒かった。特に左半身が炭の様になっていた。目も開いているのは片目だけ。

異様だった。冗談だろ、ってくらい。

その姿は俺の想像のはるか上までぶっ飛んでいたため、悲鳴も出なかった。
俺は口を半開きにぼんやりと、ただ目の前の存在を見つめるだけだった。

「……ちょっと、ライト持ってて」

姉貴の言葉で、俺の中に放浪していた自我が一部戻ってきた。
姉貴はそんな俺の手にライトを握らせると、ぐるぐる様の方へゆっくりと歩み寄った。
『駄目だ』 とも『行くな』 とも言えず、俺は何をして良いか分からないまま茫然と姉貴とぐるぐる様に光を向けていた。

姉貴はぐるぐる様のすぐ傍で止まった。しゃがむ。何をしているのかは分からない。何もしてない様でもあった。
一度俯いて、それから立ち上がった。

「ライト消して」と、俺の方を向かずに姉貴は言った。
まだ茫然としていた俺は、二度同じことを言われてようやく反射的にライトのスイッチを切った。
暗闇。数十秒か数分。もしかしたら数秒かもしれなかった。
ただ、何も見えない中で、俺は段々と自分を取り戻していった。膝ががくがくと震えだす恐怖も一緒に。

「もういーよ。つけても」

姉貴の声がして、俺は急いでライトをつけた。光の先には姉貴の姿だけがあった。ぐるぐる様は居ない。

「大丈夫、どっか行ったから」

そうして姉貴は、未だ恐怖の余韻に震える俺の方を見て大いに笑った。

「なんか、生まれたての小鹿みたい」

馬鹿にされてもしょうがない。後で思ったことだが、ここに来る前にトイレに行っといてホントに良かった。
俺の震えは、姉貴に頭をたたかれないと歩き出せない程だった。

自転車を置いた場所に戻る前に、姉貴は積んであった石に向かって手を合わせた。
どうしてだか分からなかったが、急いで俺も倣う。『どうか祟らないでください』とお願いした。

それから二人で山を降りた。
「帰りは私が前」と言う姉を強引に後ろに乗せて、俺は若干飛ばしつつ深夜の家路を走った。
身体を動かしていた方が余計なことは考えずに済むだろうって寸法だ。と言っても、それは無駄な抵抗に近かったが。

「……あん時さ、ぐるぐる様と何してたんだよ?」

帰り道の途中、まだ怖かったが、俺は思い切って訊いてみた。
後ろで鼻歌を歌っていた姉貴は、そのまま歌う様に答えた。

「見てただけ」

「……どこ見てたんだよ?」

「うーん……。足の甲にあったVの字とか。あ、ローマ字の、大文字の方ね。おかげで、はっきりした」

「は、Vの字?」

「下駄か何かの、履き物の紐の跡。下駄なら鼻緒って言うんだっけ?そこだけ、うっすらと白かったから」

俺は馬鹿だったから、姉貴が何を言いたいのか分からなかった。

「それが何?」

「火傷を免れた跡ってこと。しかも、あの子の火傷は、左側が特にひどかった。たぶん、爆弾じゃないかな」

やっと呑みこむ。爆発に巻き込まれたから、あんな身体になり、火傷も負った。
しかし爆弾と言われても、現在を生きる俺には現実味が無かった。

「地面に落ちる前に塀か何かに当たって、丁度真横、左側、頭より上で爆発した。……証拠は何も無いけどね。そう的外れでも無いと思う」

「爆弾って……、戦争?」

「そうだよ。だから、おばあちゃんの頃からこの話が伝わってる。南中山に埋められているのは、昭和二十年ごろに起きた大空襲の被害者って話だから。身元の分からない人もたくさんいた。その内の誰かじゃないかな」

昭和二十年。何年前だろう。とりあえず、俺が生まれていないことだけははっきりしている。

「……姉ちゃん、さっき、『あの子』 って言った?」

すると姉貴は、それを言うのをほんの少しためらった。

「……うん。子供だった。あんたと同い年くらいかな」

俺と同じくらい。
ぐるぐる様は戦争で死んだ子供だった。
それを思うと少しだけ、
ぐるぐる様に対して今まで抱いていたの恐怖の隙間を通って、しんみりとした何かが染み出して来た。

「どうして、今も出てきてるんだろ……」
呟く。

「空襲があったのは、夏らしいからね。忘れられないために、出て来るんじゃないかな。勝手な推測だけどさ」

それから少しの間、俺と姉貴は黙ったままだった。
夜空見上げ、俺はふと思う。
明日学校に行ったら、この噂を広めてやろう。
ぐるぐる様はただの妖怪とか幽霊じゃないんだぞ。戦争で死んだ子供なんだ。忘れられないために、出てきているんだ。

「平和にぃ、感謝だぁーっ!」

突然、後ろの姉貴が大声で叫ぶ。危うくこけそうになった。
振り向くと姉貴は「うははは」と可笑しげに笑っていた。




「……まあ、十歳そこそこの頃に、姉貴に無理やり連れ出されて、いきなりアレだからなあ。ありゃ怖かった」

時間はそれから約十年後。ここは大学近くのKが住む学生寮の一室。

「って言うか。……Kって、姉さん居たんだねぇ」

「お、そういや言ってなかったっけか。何なら、今度紹介するぞ?最近近くに男っ気無くて暇だとか言ってたからよ」

「……いや、遠慮しとくよ。何かスゴイ人の様だし」

さっきの話で、今現在のKがこうもオカルト好きな理由の一端を垣間見た気がした。
類は友を呼ぶ、ならぬ、類は友を造る、か。

「そういえば、そのぐるぐる様ってさ。今も居るんかな?」

「ん。そらまた何で?」

「あ、いや。Kが一番怖いって言うくらいだからさ。僕も一度くらいその姿を拝んでみたいなー、なんて思ったりね」

「あ?あ、いやー違うぞ。そこじゃねぇ。確かに怖かったけどさ。一番って程でもねえよ。……ワリーワリー。重要な部分が抜けてたな」

僕は首をかしげる。一体どういうことだろう。

「今までで一番怖かったのはさ。……あの後、家に帰った後にな、抜け出したことが親にばれたんだよ。姉貴が夜に叫ぶもんだから、近所の人に聞かれちまって。で、家に帰ってから、猛烈に怒られるわけだ」

「……」

「そん時のオカンが、一番、怖かったな」

そう言ってKは「うははは」と笑った。

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