【怖い話】おーぷん2ちゃんねる百物語 第21話~30話まとめ
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- 第21話『願い事』 葛◆5fF4aBHyEs
- 「『書き込むと願い事が~』とか、『○○と書くと願いが~』とか、みんなよく書けるなあ」
「えっ、何で?」
「だって……なんか怖くない?」
「そう?私は書き込んだけど、ちゃんと叶ったよ」
「そうなの?」
「うん。『彼と付き合えますように』って毎日書いてたら、絶っっっ対無理だと思ってたのに、まさかの異動で一緒になって付き合い始めたもん」
「へぇ……」
「でもさ、ちゃんと付き合い始めたからスレに『ありがとうございました』って書き込んでスレを卒業したのに、次の日彼を怒らせちゃってさ」
「うん」
「これはきっと書き込みを止めたからだと思って、今度は『彼とうまくいきますように』って書き込んだの」
「そしたらどうなったの?」
「その日の夜に彼から電話があって、『ごめんね、仲直りしよう』って♪」
「良かったじゃん」
「うん。…でもさ、書き込みを止めたら、また彼を怒らせちゃうんじゃないかって怖くって。毎日書き込み続けたの。でも……」
「何かあったの?」
「そのうちに、書き込んでるのに仲が悪くなってきて、今度は書き込む回数を1日1回から、2回に増やしたの」
「うん」
「1日に2回が3回になって、4回になって。色々なスレに書き込むようになった」
「……そうなんだ」
「その時になってやっと解ったんだ。こういうスレは、願い事が叶っても書き続けなきゃいけないんだ、って」
「……でもさ、何だかんだ言って、今がうまくいってるならいいんじゃない?結婚して専業主婦になった訳だし」
「そうだね」
「おまじないなんて、頼らない方がいいんだよ、きっと」
「? 何の話?」
「えっ?『何の話?』って……」
「今も書き続けてるんだよ」 - 第22話『盆の海』 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
- 知り合いの話。
盆に里帰りしていた時のことだ。
実家の前はすぐ漁港になっており、一歩外に出れば、潮と船の姿が確認できる。
夜、玄関先に縁台を出して祖父と将棋を指していると、沖から波とは別の音が聞こえてきた。
ぎぃ ぎぃ ぎぃ
櫂を漕ぐ音。幼い頃はよく耳にしていたが、実際に聞くのは久し振りだった。
「へぇ懐かしい、手漕ぎ舟ってまだあるんだねぇ」
そう祖父へ言ったところ、渋い顔でこう返してくる。
「今時に手で漕ぐ舟なんか、どこの家も置いてねぇよ」
祖父はそれ以上何も口に出さない。
局面は祖父に不利であり、それを打開しようと必死な様子だ。
その内、知り合いは奇妙な事に気が付いた。
櫂を漕ぐ音は小さくも大きくも成らず、ずっと聞こえ続けている。
だのに、どこからも近づいてくる舟の姿は見えないのだ。
訝しげに暗い海を見やる彼に向かって、祖父は言葉を掛けた。
「盆の夜に海をまじまじ見るもんじゃねぇ。連れてかれるぞ」
彼はその忠告に従い、海を見るのを止めた。
その後も将棋を指している間中、沖合から手漕ぎの音が聞こえていたという。 - 第23話『だるまさんがころんだ』 もふ太郎◆YAOzh1h34wV
- とある地方都市でのことだ。
K町にかなり勾配のある坂があるのだけれども、そこでちょっとした噂話が広がったことがある。
夕暮れ時になるとその坂の下に、たまに達磨が置かれていることがあるんだそうな。
それに気が付くのは、必ずその道を登ろうとしていて、たった一人でいる時。
ぽつんと道の真ん中に置かれている真っ赤な達磨はどこか寂し気で、ついつい振り返って見てしまう。
しかし、決して振り返ってはならない。
登りきるまでに3回振り返ると呪われる。
そんな、子供だましの他愛もない噂話だった。
ある事が起きるまでは。
その日、ある青年が夕方に坂の下で達磨が置いてあるのを見つけたそうだ。
青年は地元の人間で、最近流行り始めたその噂を知っていた。
なので、本当に置いてあるのかと驚いたがすぐに馬鹿馬鹿しい気持ちになった。
だもんで、無視してそのまま坂を登っていったのだけれど、なぜか無性に後ろが気になって仕方がない。
視線。
背後から見られている感じがする。
つい、振り返る。
誰も居ない。達磨があるだけ。
再び前を向いて歩きだすとやはり視線を感じるが、振り返ると達磨しかない。
そういえば、もう一回振り返ると呪われるんだっけ。
そこで青年はちょっとした悪戯を思いついた。
このまま後ろ向きで登ったらどうなるんだろう。
青年は達磨を見つめながら、後ろ向きでそろそろと坂を登りだした。
しばらくして坂の途中辺りに差し掛かったころ。
何も起きなくて退屈になった青年が普通に歩こうかと思い始めた時、あることに気が付いた。
距離が、縮まっていない?
坂を登りだして十数メートルは登っている。なのに、目線に入る達磨の大きさは、最初に振り返った時のままだ。これだけ離れれば十円
玉くらいの大きさに見えていいはずだ。
……違う。大きくなっている?
3メートル程の道幅の、半分くらいを達磨が占領していた。
まさか、まさか。
速足で、でも視線を外すことが出来ずに後ろ向きのまま登る。
登る。
変わらない。
登る。
変わらない。
いつのまにか達磨の幅は道幅いっぱいに広がり、高さも角にあった電信柱と同じくらいになっていた。
そして。
達磨が動いた。
ずうぅぅぅん。
達磨がジャンプして坂を登って来るのである。地面に落ちる度鈍く地響きがする。
青年はそれから逃れようと必死で坂を登ったが、後ろ向きというハンディのままではそうそう早くは進めない。
すぐに追いつかれてしまった。
気が付けば。
達磨は青年の目と鼻の先まで追いついていた。既に巨大、といっても差支えない程の大きさにまで膨れ上がっている。
そして。
達磨が青年の目の前でジャンプしたかと思うと、そのまま青年の頭上へと落ちて来た。
「ああああああああぁぁぁァァァァアアアアアアアアア!!!!」
巨大な達磨に押しつぶされながら、青年は悲鳴とうめき声の混じり合った声を上げ、気を失った。
青年が再び目を覚ました時には夜になっていた。辺りは暗く、電燈と周りの家々の明かりだけがぽつぽつと点っている。
しかし、それにしては目の前が暗いことに青年は気が付いた。
やがて思い知る。辺りが暗いのではなく、自分の目がおかしいのだと。
青年の左目は視力を失っていたのだ。ちょうど、達磨の目が片目しかないように。
その達磨がなんなのかは、誰にもわからない。
もしもあなたが坂道で達磨がぽつんと置かれているところを目にしたときは、決して振り返ってはならない。
青年のように、大事な片目を失いたくなければ。
でも、あなたがそれでも構わないというのであれば、ぜひ振り返ってみて教えてほしい。
三度振り返ったら、一体何が起きるのかを……。 - 第24話『球体』 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo
- 幼い頃、白くぼんやりと光る球体をよく見ていた。球体は大抵、私が1人で夕暮れ時の町を眺める時現れた。
目撃する頻度はまちまちで、1週間に1度見える時期もあれば、数ヶ月間姿を見せない時期もあった。
球体は、どこかの家の窓から飛び出し、暮れつつある空のどこかに消えていくのが常であった。
その光景はとても幻想的で、夕暮れ時の町を眺めることは幼い私にとって楽しみな時間だった。
ある時、祖父の家の庭で遊んでいると、出掛けており留守だった祖父の部屋から、球体が飛び出すのを目撃した。
私は非常に興奮し、急いで家に入ると祖母の元へ走りよって球体が祖父の部屋から飛び出したことを報告した。
すると祖母は悲しそうな顔をして、球体のことは祖父に絶対話さないよう私を諭した。
私には何故球体のことを祖父に話してはいけないのか全く検討がつかなかったが、祖母の言いつけを守り祖父には一切この話をしなかった。
球体をみた数日後、祖父が亡くなった。就寝中に心臓が止まり、そのまま息を引き取ったらしい。そして祖父の死以降、私は光る球体を見なくなった。
あの球体は何だったのか、今となっては分からない。祖母は10年前に亡くなった。結局球体のことは聞けずしまいのままである。 - 第25話『ピース』 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
- サークル仲間の話。
幾つかの仲が良いサークルが集まって、キャンプに行くことにした。
キャンプ自体は大成功で、とても楽しいものだったらしい。
帰ってきてから、その時の記念写真を配っていると、あるサークルの女性が
頻りに首を傾げ始めた。
「ねぇ、この人、あの時いたっけ?」
そう言って、写真に写った一人を指で示す。
「……誰だこの人? 見たこと無いぞ」
「いやこの写真って最後の集合写真だろ。部外者なんて誰も居やしないよ」
「でも実際に写っているし」
「これ撮った時、こんな人いなかったぜ。っていうか俺の隣じゃん!」
すわ心霊写真かと、その場では軽く騒ぎになったそうだ。
「……ってことがあってさ。これがその問題の写真なんだけど」
そう言って、彼は一枚の写真を私の前に差し出した。
仲間達が皆ニカッと笑って写っている、良い集合写真だ。
「どこにも幽霊みたいな人は見えないんだけど?」
私がそう疑問を問えば、彼は前列真ん中にいる一人の男性を指差した。
「この人なんだ。こんな人、この時この場所には絶対にいなかった」
座の中心にしゃがんで座り、元気良くピースサインを作っている男性。
周りの誰にも負けないほどに、満面の笑みを浮かべている。
ただ服装や装備が、周りに比べてかなり古くさい。
「……これ本当に心霊写真なの?
こっちのこと担ごうとしてるんじゃないの?」と言う私に、
「……皆が皆、そういう反応なんだよなぁ。
でも仕方ないよなぁ、区別つかないもんなぁ……」
そう苦笑いをする彼だった。
これから二年後に、まったく別の友人から、似たような話を聞かされた。
同じように、その場にいなかった見覚えの無い人物が、集合写真に写り込んで
いたという。
試しに写真を見せてもらうと、やはり件の男性であった。
同じ服装でしゃがみ込み、やはりピースを突き出して爽やかに笑っていた。
白い歯が眩しい。
私が二年前の話を聞かせると、友人はひどく驚いた。
「えっ、これって霊なの?」
「いや、本当にそうなのかはわからないんだけど、この顔だったよ」
そしてやはり、こんな間抜けな会話をすることになったのだった。
- 第26話『花』 葛◆5fF4aBHyEs
- 久しぶりに幼なじみと再会した
彼とはお互いに「隣家まで1kmとか普通」「遊びに行ける距離に同い年の子が居ない」という限界集落で育ったので、小学校の頃はよく遊んでいた
中学の時はお互いそこまで親しいわけでなく、別々の高校に進んでからはぱったりと顔を合わさなくなった
通学に不便だからと高校近くのアパートで一人暮らしを始め、風の噂に「悪い仲間に入って高校を中退した」と聞いていたのだが……
久しぶりに会った彼は、見違えるほど爽やかな好青年になっていた
立ち話も何だし、自分もちょうど時間があったので、二人して喫茶店に入る
「変わんねーな、お前」
「あんたは変わったねー。てか、暴走族に入って高校中退したって聞いてたんだけど」
単刀直入に話題を振ると、彼は困ったような顔で頷いた
「でも、もうやめたんだけどね」
「何かあったの?」
水を向けると、彼は言いにくそうに口を開いた
「DQN話になるから、不快になったらごめんな。……オレ、高校やめてから仲間と一緒に毎日のように暴走行為を繰り返してたんだ」
ちょっと口には出せないくらい荒い運転で、他の人の迷惑なんて一切考えなかったらしい
「……で、ある日事故った」
スリップしてガードレールと接触し、倒れ込んだそうだ
幸いにも無傷だったが、無傷だからこそ余計に恥ずかしかったらしい
「仲間は笑ってるし、むしゃくしゃしてガードレールの支柱を蹴飛ばしたんだ」
そうしたら、支柱の向こうに置かれていた、花束を挿した瓶が倒れたそうだ
最初は「悪いことをしてしまった」と後悔した彼だったが、仲間たちに笑われてついカッとなってしまったらしい
「その花束をグシャグシャに踏み潰したんだ」
「うわぁ……」
正直に引いてしまう自分に、彼も申し訳なさそうな表情を浮かべていた
「……その時は『悪いことするオレカッケー!』ってくらいの気持ちだったんだけど、その夜から妙な夢を見始めて……」
それは、ランドセルをかるった小学校中学年くらいの女の子の夢
「自分は交差点の近くに居て。女の子がこっちに駆けて来て。『おはようございます!』って言って手を振りながら通り過ぎていって……」
そこまで言ってから一旦言葉を切り、大きく息を吐いた
「オレは何でか、『そっちに行っちゃ危ない』って知ってるんだよ。でも、そう言ってあげたいのに声が出なくて動けなくて……」
ほんの数分間の出来事。それを繰り返し繰り返し、何度も夢に見たのだという
「寝付けなくなってかなり参って、そうなってからやっと反省して、花束を持ってお参りに行った」
その日から、夢は見なくなったそうだ
「……それ、女の子が化けて出てたってこと?」
「うーん、どうなんだろ。どっちかというと女の子の親とか、『通学見守り隊』のシニアの人とかだと思う。見ていたのに助けられなかった後悔が強かったから」
「……そっか」
仲間とは離れてしばらく経つが、今でも女の子の月命日にはお参りを欠かさないらしい
そして今は土建屋に就職し、元請けに引き抜かれた、と彼は話してくれた
「それにしても、良かった。お前と久しぶりに会えて。オレ、今度から東北行くんだ」
現場主任が復興の応援に行くことになったのだが、その時に彼も誘ってくれたのだと言う
「しばらく帰ってこないと思うけどさ、親からは勘当されてるし、学は無いけど体力だけなら無駄に有り余ってるし、出来ることを頑張ってくるよ」
そのために、女の子のところにお参りして「しばらく来れません」と手を合わせて来た帰りに、自分とバッタリ出会ったらしい
「良かったらさ、花束代は送るから、代わりにお参りしてくれないか。毎月じゃなくて、行ける時で構わないから」
そう言って、彼は発って行った。あれから2年が経つが、どうやら元気でやっているようだ - 第27話『ネズミ捕り』 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
- 知り合いの話。
家の天井裏から、チューチューと鼠の声が聞こえた。
駆除しようと思い、倉庫にあった金物製の古いネズミ捕り罠を仕掛けたという。
数日様子をうかがっていたが、何かが罠に掛かった気配は無い。
押入内の天袋を上げて状態を確認してみた。
ネズミ捕りは、何か大きな物が上に乗ったかのように、ペチャンコに潰れていた。
天井裏は狭く、ネズミ捕りを潰せる程の物体など何処にも見えない。
というか罠を踏み潰したら、それを置いていた薄い天井板は確実に破れている筈だ。
彼は罠の残骸を回収すると、それきり天井裏のことは無視することにしたそうだ。
鼠の声はいつの間にか聞こえなくなり、特に問題も起こっていないのだという。 - 第28話『帰省』 南 ◆8pXPjdBnlY
- GWだから実家に帰省していた。実家は昨年春休みに引っ越してきた所で、築2年くらいの一軒家。前の家に比べてちょっと小さいことを除けばそこそこ過ごしやすい家だと、引っ越し作業を手伝っている時は思っていた。
引っ越し作業以来、初めて足を踏み入れた実家。引っ越し直後は雑然としていたが、随分ときれいになったものだ。
私に宛がわれたのは1階の和室。TVもPS3も完備された快適空間。他の家族は2階で寝るから、真夜中までゲームをしていても気兼ねせずにすむ。良いことづくめだとほくほくしていた。
帰省初日。風呂上がりに廊下をぷらぷらしていると、和室から物音がした。ペットの犬が侵入しているのか思い、数ヵ月ぶりにもふってやろうと襖を開けたが犬はいなかった。
気のせいかと襖を閉め、リビングに向かい妹お手製チーズケーキを食べてまっったりと過ごした。両親と話をしていたら、いつの間にか深夜になっており、そろそろ寝るかということで解散。和室に行きゲームをするでもなく大人しく寝た。
2日目、家に私以外誰もいない状況ができた。ゲームをしたり読書をしたりで暇潰ししていたら、急に強烈な眠気に襲われた。
取り敢えず枕とタオルケットを出し、寝転がった。次の瞬間、金縛りに。
背筋が粟立つ感覚と、何かの視線を感じたがすぐに意識が遠退いて、起きたらもう夕方だった。
そして3日目。一日中家族と外に出ていて、ついさっき帰宅。そっと和室を覗くと、本棚の本の並びが少し変わっていた。気味悪く思い、泥棒に入られていたらいけないし家族に報告しとこうと和室に背を向けた。
すると背後からゴトゴトという物音とともに、誰かの話し声が聞こえた。
もう本気で怯えて親に相談したが、たぶん気のせいだろうと言われた。 - 第29話『傘』 葛◆5fF4aBHyEs
- 駅前で偶然、顔見知りと出会った
別段親しいわけでもない、『知り合いの知り合い』といった感じなのだけれど、何かとよく顔を合わせる彼女
たまたま彼女も自分と同じように、待ち合わせまでかなり時間があるということで、どちらが言い出すともなく駅前の喫茶店で時間を潰すことになった
コーヒーを飲みながら他愛もない話をしていると、ぽつぽつと雨が降り始めた
喫茶店に入る頃から今にも降り出しそうな曇り空だったので、すぐにザアァ……と本降りになる
雨はしばらく止みそうにない
次々と落ちてくる雨粒を見るともなしに見ていると、やがて時間になり、
「そろそろ時間だから……」と席を立ち、会計を済ませる
二人、連れ立って店を出ると、彼女はひょいと店の前に置かれた傘立てから一本の黒い傘を抜いた
驚いたのはこっちだ。いやいや、アナタ店に入る時傘持ってなかったやん
それを指摘すると、彼女はあっけらかんと言い放つ
「だって、雨降ってるし。濡れるの嫌じゃん。」
「いやいやいや、アナタがその傘取っちゃったら、傘の本来の持ち主が濡れて歩かなきゃならなくなるじゃない」
彼女の返答に言い様の無い徒労感を覚えるが、彼女もこちらの言い分にムッとしたようだ
「いいじゃん、この傘埃ついてるし。しばらく誰も使ってないみたいだから、私が使って上げるのよ」
いやいやいやいや、そういう問題じゃないだろう
……そう言い掛けたが、ふと気付く
傘は確かに彼女の言う通り、埃っぽかった
この雨の中さしてきたとはとても思えない。というより、2~3ヶ月と言わず、2~3年放置されたと言われても可笑しくない
(これってもしかして、『誰も使ってない』んじゃなくて、『誰もが避けて通る一品』なんじゃ……)
それに思い至った時には既に彼女は
「じゃ、私、待ち合わせあるから」
『これ以上の話は不要』とばかりにさっさと身を翻していた
手にはしっかりとあの黒い傘をさして
次に彼女を見かけたのは、2ヶ月後だった
……この2ヶ月間で何があったのだろうか
痩せこけ、目元には『化粧でもこうはいくまい』と思えるほど濃いクマが出来、目は落ち窪んでいるにも関わらず目だけはギラギラと光っていた
そして、手にはしっかりとあの黒い傘を抱いていた
彼女はこちらに気付くと、ニヤリと笑う
「……アンタも私のこと『可笑しい』って言うの……でもダメよ、この傘はあげないわぁ……」
彼女はそれだけ言うと、雑踏の中をフラフラよたつきながら去っていった
最後に彼女を見たのは、黒い縁取りの白黒の写真の中でだった
奇行を繰り返し、誰も近づかなくなった彼女は、浴室で倒れていたのだという
シャワーを出しっぱなしにし、黒い傘を広げた下で
だがそれ以降、黒い傘を見た者は誰も居ない
晴れているにも関わらず室内でさす程彼女が気に入っていた傘なら、一緒に棺に入れてやろうとしたのに、ほんの少し目を離したうちに、傘は見当たらなくなったのだという
今でもあの傘は、どこかで引き抜かれるのをひっそりと待っているのかもしれない…… - 第30話『小人』 林檎◆vCMeD/yt1
- 私が夜、歯を磨こうと洗面所へ向かったときのこと。
その日は丁度月明かりも出ていて、電気を点けるほど暗くはなかったので電気をつけずに歯ブラシを戸棚から取り出そうと扉を開けたところ・・・。
おじさん小人が石鹸の上に座っていた。
目が合って、思わず「うわっ」と声を出すと、おじさん小人はペコリとお辞儀をしてどこかへ消えていってしまいました。
彼が何をしていたのか、どうしてそこにいたのか、考えてみてもわからないままです。。。
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