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2022-08-01 (Mon) 20:12

【洒落怖】[危険な好奇心] その2 … 学校では相変わらず『トレンチコートの女』の噂は囁かれていた

2chオカルト板

295 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/24(月) 03:21:39 ID:5CaStqefO

その日は、学校で噂の『トレンチコート女』(推定・中年女)には会わなかった。
次の日も、その次の日も会わなかった。
しかし、学校では相変わらず『トレンチコートの女』の噂は囁かれていた。

慎と一緒に下校することになって五日目、俺達は久しぶりに淳の見舞いに行くことにした。
お土産に、給食のデザートのオレンジゼリーを持って行った。

淳の家に着き、チャイムを押した。
いつもの様に叔母さんが明るく出て来て、俺達を中に入れてくれた。
淳は相変わらず元気が無かった。
ジンマシンは大分消えていたが、淳本人は『横腹の顔の部分が日に日に大きくなっている』と言い、俺と慎には全く分からなかった。
むしろ、前回見たときよりはマシになっているように見えた。
精神的に淳はショックを受けているのだろう。
俺達は学校で流れている『トレンチコートの女』の噂は、淳には言わなかった。

帰り間際に、淳の叔母さんが俺達の後を追い掛けて来て、『淳、クラスでイジメにでも会っているの?』と不安げな顔で聞いて来た。
俺達は否定したが、本当の理由を言えないことに、少し罪悪感を感じた。

それから三日後、その日は珍しく、内藤と佐々木と俺と慎の四人で一緒に下校した。
内藤は体がデカく、佐々木はチビ。実写版のジャイアンとスネオみたいな奴ら。
もう俺と慎の中で、『中年女』の事は風化しつつあった。
学校で噂の『トレンチコート女』も実在したとしても、全くの別人と思えて来ていた。
その日は、四人で駅前にガチャガチャをしに行こう、と言う話になり、いつもと違う道を歩いていた。

楽しく四人で話しながら歩いていると、佐々木が『あ、あれ、トレンチコート女ぢゃね?』
内藤『うわっ!ホンマや!きもっ!』と言い出した。
俺はトレンチコート女を見てみた。心の中で別人であってくれ!と願った。
トレンチコート女はスーパーの袋を片手に持ち、まだ残暑の残るアスファルトの道で、ただ突っ立っていた。

うつむいて表情は全く分からない。
慎は警戒しているのか、小声で俺達に『目、合わせるなよ!』と言ってきた。
少しずつ、女との距離が縮まっていく。緊張が走った。女は微動たりせず、ただうつむいていた。

女との距離が5M程になったとき、女は突然顔を上げ、俺達四人の顔を見つめてきた。
そしてその次に、俺達の胸元に目線を送って来ているのが分かった。
!名札を確認している。

俺は焦った。平常心を保つのに必死だった。
一瞬見た顔で、あの日の出来事がフラッシュバックし、心臓が口から出そうになった。
間違いない。『中年女』だ!
俺はうつむきながら歩き過ぎた。
俺はいつ襲い掛かられるかとビクビクした。
どれくらい時が過ぎただろう。いや、ほんの数秒が永遠に感じた。
内藤が『あの目見たけ?あれ完全にイッテるぜ!』と笑った。
佐々木も『この糞暑いのにあの格好!ぷっ!』と馬鹿にしていた。
俺と慎は笑えなかった。

佐々木が続けて言った。
『やべ!聞こえたかな?まだ見てやがる!』
俺はとっさに振り返った。
『中年女』と目が合った・・・
まるで蝋人形のような無表情な『中年女』の顔が、ニヤっと、凄くイヤらしい微笑みに変わった。
背筋が凍るとはこの事か・・・

俺は生まれて始めて、恐怖によって少し小便が出た。
バレたのか?俺の顔を思い出したのか?バレたなら何故襲って来ないのか?
俺の頭は、ひたすらその事だけがグルグル巡っていた。
内藤が『うわーっ、まだこっち見てるぜ!佐々木!お前の言った悪口聞かれたぜ!俺知らねーっ!』
っとおどけていた。

もうガチャガチャどころではない。
曲がり角を曲がり、女が見えなくなった所で、俺は慎の腕を掴み『帰ろう!』と言った。
慎は俺の目をしばらく見つめて、『あ、今日塾だっけ?帰らなやばいな!』と俺に合わせ、俺達は走った。

家とは逆の方向に走り、しばらくして俺は慎に『アイツや!あの目、間違いない!俺らを探しに来たんや!』
慎は意外と冷静に、『マジマジと名札見てたもんな・・・学年とクラス、淳の巾着でバレてるし・・・』
俺はそんな落ち着いた慎に腹がたち、『どーすんだよ!もう逃げ切れネーよ!家とかそのうちバレっぞ!!』
慎『やっぱ警察に言おう。このままはアカン。助けてもらお』
俺『・・・』

俺はしばらく黙っていた。たしかに、他に助かる手は無いかもしれないと思った。
『でも、警察に何て言う?』と俺が問うと慎は、『山だよ。あの山に打ち付けられた写真とか、ハッピー、タッチの死体。あれを写真に撮って、あの女が変質者って言う証拠を見せれば、警察があの女を捕まえてくれるはずや!』
俺は納得した。もうあの山に行くのは嫌だったが、仕方が無かった。
さっそく明日の放課後、裏山に二人で行く事になった。

明日の放課後、裏山に行く。
その話がまとまり、俺達は家に帰ろうとしたが、『中年女』が何処に潜伏しているか分からない為、俺達は恐ろしく遠回りした。
通常なら20分で帰れるところを、二時間かけて帰った。

家に着いて、俺はすぐに慎に電話した。
『家とかバレてないかな?今夜きたらどーしよ!』などなど。
俺は自分がこれほどチキンとは思わなかった。
名前がバレ、小屋に『淳呪殺』と彫られた淳が、精神的に病んでいるのが理解できた。
慎は『大丈夫、そんなすぐにバレないよ!』と俺に言ってくれた。
この時俺は思った。普段対等に話しているつもりだったが、慎はまるで俺の兄のような存在だと。
もちろん、その日の夜は眠れなかった。
わずかな物音に脅え、目を閉じればあのニヤッと笑う中年女の顔が、まぶたの裏に焼き付いていた。

朝が来て学校に行き、授業を受け、放課後の午後3時半。
俺と慎は、裏山の入口まで来た。

俺は山に入るのを躊躇した。
『中年女』『変わり果てたハッピーとタッチ』『無数の釘』
頭の中をグルグルと、鮮やかに『あの夜の出来事』が甦ってくる。
俺は慎の様子を伺った。慎は黙って山を見つめていた。慎も恐いのだろう。
やっぱ、入るの恐いな・・・と言ってくれ!と俺は内心願っていた。

慎はズボンのポケットからインスタントカメラを取り出し、右手に握ると、俺の期待を裏切り、『よし』と小さく呟き、山へ入るとすぐさま走りだした。
俺はその後ろ姿に引っ張られるように走りだした。
慎は振り返らずに走り続ける。
俺は必死に慎を追った。一人になるのが恐かったから必死で追った。
今思えば慎も恐かったのだろう。恐いからこそ、周りを見ずに走ったのだろう。

あの場所が徐々に近づいてくる。
思い出したくもないのに、あの夜の出来事を鮮明に思いだし、心に恐怖が広がりだした。
恐怖で足がすくみだした時、あの場所に着いた。
そう、『中年女が釘を打っていた場所』『中年女がハッピー、タッチを殺した場所』『中年女に引きずり倒された場所』
『中年女と出会ってしまった場所』

俺は急に誰かに見られているような気がして、周りを見渡した。
いや、誰かにでは無い。中年女に見られているような気がした。
山特有の静寂と、自分自身の心に広がった恐怖がシンクロし、足が震えだす。
立ち止まる俺を気にかける様子無く、慎はあの木に近づきだした。
何かに気付き、慎はしゃがみ込んだ。
『ハッピー・・・』
その言葉に俺は足の震えを忘れ、慎の元に歩み寄った。

ハッピーは既に土の一部になりつつあった。
頭蓋骨をあらわにし、その中心に少し錆びた釘が刺さったままだった。
俺は釘を抜いてやろうとすると、慎が『待って!』と言い、写真を一枚撮った。
慎の冷静さに少し驚いたが、何も言わず俺は再び釘を抜こうとした。
頭蓋骨に突き刺さった釘をつまんだ瞬間、頭蓋骨の中から見たことの無い、多数の虫がザザッと一斉に出てきた。

『うわっ!』

俺は慌てて手を引っ込め、立ち上がった。
ウジャウジャと湧いている小さな虫が怖く、ハッピーの死体に近づく事が出来なくなった。
それどころか、吐き気が襲って来てえずいた。
慎は何も言わずに背中を摩ってくれた。
俺はあの夜ハッピーを見殺しにし、またハッピーを見殺しにした。
俺は最高に弱く、最低な人間だ。

慎はカメラを再び構え、あの木を撮ろうとしていた。
『ん?!おい!ちょっと来てーや!』
何かを発見し、俺を呼ぶ慎。俺は恐る恐る慎の元に歩み寄った。
慎が『これ、この前無かったよな?』と、何かを指差す。
その先に視線をやると、無数に釘の刺さった写真が・・・

ん?たしか前もあったはずじゃ・・・
いや!写真が違う!
厳密に言うと、この前見た4・5歳ぐらいの女の子の写真はその横にある。
つまり、写真が増えている!
写真の状態からして、ここ2・3日ぐらいに打ち込まれているであろう。
この前に見た写真は、既に女の子かどうかもわからないぐらいに、雨風で表面がボロボロになっている。

新しい写真も、4、5歳ぐらいの女の子のようだ。
この時は慎に言わなかったが、俺は一瞬、新しい写真が俺だったらどうしよう!!とドキドキしていた。
慎はカメラに、その打ち込まれた写真を撮った。
そして、『後は秘密基地の彫り込みを撮ろう』と言い、又走りだした。
俺は近くに中年女がいるような錯覚がし、一人になるのが怖く、慌てて慎を追った。

秘密基地に近いてきて、俺は違和感を感じ、『慎!』と呼び止めた。

違和感。
いつもなら、秘密基地の屋根が見える位置にいるはずなのだが、屋根が見えない。
慎もすぐに気付いたようだ。
このとき、脳裏に『中年女』がよぎった。
胸騒ぎがする。鼓動が激しくなる。

慎が『裏道から行こう』と言った。俺は無言で頷いた。
裏道とは、獣道を通って秘密基地に行く、従来のルートとは別に、茂みの中をくぐりながら、秘密基地の裏側に到達するルートの事である。
この道は、万が一秘密基地に敵が襲って来た時の為に造っておいた道。

もちろん、遊びで造っていたのだが、まさかこんな形で役に立つとは・・・
この道なら万が一基地に『中年女』がいても、見つかる可能性は極めて低い。
俺と慎は四つん這いになり、茂みの中のトンネルを少しずつ進んだ。

そして秘密基地の裏側約5M程の位置にさしかかった時、基地の異変の理由が分かった。
バラバラに壊されている。
俺達が造り上げた秘密基地は、ただの材木になっていた。
しばらく様子を伺ったが、中年女の気配もないので俺達は茂みから抜けだし、秘密基地の跡地に到達した。

俺達はバラバラに崩壊された秘密基地を見て、少し泣きそうになった。
秘密基地は言わば、俺達三人と2匹のもう一つの家。
バラバラになった材木の片隅に、大きな石が落ちていた。恐らく誰かが、これをぶつけて壊したのだろう。
誰かが?・・いや、多分『中年女』が・・・。

慎が無言で写真を撮りだした。
そして数枚の材木をめくり、『淳呪殺』と彫られた板を表にし、写真を撮った。
その時、わずかな板の隙間からハエが飛び出し、その隙間からタッチの遺体が見えた。
ハッピーとタッチ。
秘密基地よりもかけがえの無い2匹を、俺達は失った事を痛感した。

慎は立ち上がり、『よし、このカメラを早く現像して、警察に持って行こう』と言った。
俺達は山を駆け降りた。
山を降り、俺達は駅前の交番へ急いだ。
このカメラに納められた写真を見せれば、中年女は捕まる。俺らは助かる。
その一心だけで走った。

途中でカメラ屋に寄り、現像を依頼。
出来上がりは30分後と言われたので、俺達は店内で待たせてもらった。
その間、慎との会話はほとんど無かった。ただただ 写真の出来上がりが待ち遠しかった。

そして30分が過ぎた。

『お待たせしましたー』
バイトらしき女店員に声をかけられた。
俺と慎は待ってましたとばかりにレジに向かった。

女店員は少し不可解な顔をしながら、『現像出来ましたので、中の確認をよろしくお願いします』といいながら、写真の入った封筒を差し出した。
まぁ現像後の写真が、犬の死骸や釘に刺された少女の写真のみだから、不可解な顔をするのも当然だが・・・
慎はその場で封筒から写真を取り出し、すべての写真を確認し、『大丈夫です。ありがとうございました』と言い、代金を支払った。
店を出て、すぐさま交番へ向かった。

これで全てが終わる。
駅前の交番へ二人して飛び込んだ。
『ん?!どうしたの?』
中にいた若い警官が、笑顔で俺達を迎えてくれた。
俺達はその警官の元に歩み寄り、『助けてください!』と言った。

俺と慎は、あの夜の出来事を話した。裏付ける写真も一枚一枚見せながら話した。
そして、今も『中年女』に狙われている事を。

一通り話し終わると、その警官は穏やかな表情で『お父さんやお母さんに言ったの?』
俺たちは親には伝えてないと言うと、『ん~んぢゃ、家の電話番号教えてくれるかな?』と警官は言い出した。

慎が『なんで親が関係あるの?狙われているのは俺達だよ?!』とキレ気味に言い放った。
ちなみに慎の両親は医者と看護婦。高校生の兄貴は某有名私立高校生。
俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、一番厳しい家庭でもある。

あの夜は親に嘘をついて秘密基地に行き、このような事に巻き込まれたとバレれば、俺や淳もだが、慎が一番洒落にならないのである。
『助けてよ!警察官でしょ!!』と慎が詰め寄る。

警官は少し苦笑いして、『君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事はキチンと親に言わなきゃダメだよ』
と、しばらくイタチゴッコが続いた。

あげくに警官は、『じゃあ君達の担任の先生は何て名前?』など、俺達にとっては脅しに取れる言葉を投げ掛けてきた。
まぁ警官にとっては、俺達の保護者及び責任者から話を聞かないと・・・って感じだったのだろうが、俺達にとって、こういう時の親や先生は、怒られる対象にしか考えられなかった。
そうこうしているうちに、俺達の心の中に、目の前にいる警官に対して不信感が芽生えてきた。
このまま此処にいれば、無理矢理住所を言わされ、親にチクられる!と。

この警官は、俺達の話を信じてくれてないのでは?と俺は思い始めた。
俺や慎が必死に助けを求めているのに、『親』『先生』ばかり言ってくる。
俺達は『中年女』の存在を裏付ける、証拠写真まで持参しているのに・・・
俺はもう一度警官に写真を見せつけ、『犬をこんな殺し方する奴なんだよ!』と言った。

すると警官はしばらく黙り込み、写真を手に取り、意外な一言を言った。
『ん~・・・これって犬?なの?』
『は?』と俺と慎は驚いた。この人は何を言っているんだろう!と。
続けて警官は、『いや、君達を信じていない訳じゃないよ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?』
警官は冗談を言っている訳では無く、本当に分からないようだ。

俺はハッピーの写真を取上げ、『だから・・・』と説明しかけて言葉が詰まった。
確かにこの写真を客観的に見ると、犬の死骸には見えないかも・・・と思った。
薄茶色に変色した骨に、所々わずかに残っている毛。
俺と慎は、ハッピーが死体になった翌日にも見ているので、腐食が進んでいても元の形(倒れていた角度、姿)を知っているが、知らない奴が見ると、ただの汚れた石に汚い雑巾の様なものが、絡んでいるようにしか見えないかも知れない。

俺は冷静に他の写真も見てみた。
板に刻まれた『淳呪殺』、少女の写真に無数の『釘』。
たしかに、『中年女』の存在に直接結び付けるのは難しいのか?
ひょっとして警官は、小学生の悪戯と思っていて、先程から『親』『担任』などと言っているのか?
俺はこのまま此処にいては危険だと感じ出した。
『絶対、親を呼び出すつもりだ!』
俺は慎に小さな声で耳打ちした。

慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、外に出る合図を送ってきた。
すると次の瞬間、慎は勢いよく振り向き走りだした。
俺もすぐさま後を追い、交番から抜け出した。
後ろから『おいっ!』と警官が呼び止める声がしたが、俺達は振り向かずに走り続けた。

警官が追い掛けてくる気配は無かった。
警官はおそらく、悪戯しにきた小学生が、嘘を見破られそうになり逃げ出した。とでも思っているのだろう。

俺と慎は、警官が追って来ていないことを充分に確認し、道端に座り込み、緊急ミーティングを開催した。
『これからどーする?』
『どーしよ・・・』
俺達は途方に暮れていた。最後の切り札の警察にも信じてもらえず、『中年女』から身を守る術を失った。

これで全てが解決すると俺達は思い込んでいただけに、ショックはデカかった。
『このままだったら中年女に住所バレて・・・』
俺は恐かった。
すると慎が、『しばらくあの女には出くわさないように注意して・・・』と言いかけたが、俺はすぐに、『もう無理だよ!淳の学年とクラスがバレてる時点で、すぐに俺らもバレるに決まってる!』と少し声を荒げた。

『でも、あの女・・・俺達に何かする気あるのかな?』
『?』
慎が言いだした。
『だってこの前俺ら、学校帰りにあの女に出会ったじゃん。もし何かするつもりなら、あの時でも良かった訳じゃん』
『・・・』
慎が続けて、『それに山・・・もし俺らのことを許してないなら、山に何らかの呪い彫りとかあってもいーはずじゃん』
『・・・』
たしかに。山に行った時、新しい俺達に対する呪い的な物は無かった。
秘密基地は壊されていたが・・・
新しい女の子の釘刺し写真はあったが、俺達・・・まして、フルネームがバレている淳の呪い彫りも無かった。

俺は内心、そーなのかな?と反論したかったが、しなかった。
慎の言う通り、実は俺達が思っている程『中年女』は俺達の事を怨んでいない、忘れかけている。と思いたかった。
慎はもう一度、『俺らを本気で怨んでいるなら、何らかのアクションを起こすはずだろ?』
と、まるで俺を安心さすかのように言った。

そして、『学校の近くをウロついてるのも、俺らを捜してるんぢゃなく、写真の女の子を捜してる可能性もあるだろ?』
と言葉を続けた。

『そーか・・・』
俺はその慎の言葉を聞いて、少し気持ちが楽になった感じがした。
と言うか、慎の言った言葉を自分自身に言い聞かせ、自分自身を無理矢理納得させようとした。
それは現実逃避に近いかもしれない。
慎自身もそうだったのかも知れない。
もう『中年女』から逃げる術が見つからず、言ったのかも知れない。

しかし俺は、俺達は、『そーだよな!そのうち俺らのことなんて忘れよる!』
『もう忘れとるって!』
『なんだよチクショー!ビビって損した!』
『ほんま、あの女、泣かしたろか!』
とお互い強がって見せた。
ある意味、やけくそに近いかもしれない。

しばらくその場で、慎と『中年女』の悪口などを談笑していた。
辺りは薄暗くなり始め、俺達は帰宅することにした。

慎と別れる道に差し掛かって、『明日の帰り、淳の様子見に行こっか!』
『おう!そやな!』
とお互い明るく振る舞って、手を振り別れた。

俺の心は少し晴れやかになっていた。
そーだよな・・・慎の言う通り、中年女はもう俺達の事なんて忘れてるよな・・・と。
まるで自己暗示のように、繰り返し言い聞かせた。
足取りも軽く、石を蹴りながら家に向かった。
空を見上げると雲も無く、無数の星がキラキラ輝き、とても清々しい夜空だった。
今まで『中年女』の事でウジウジ悩んでいたのが、馬鹿らしく思えた。

自宅に近づき、その日は見たいアニメがあるのに気付き、俺は小走りで家に向かった。
『タッタッタッタッ・・・』
夜の町内に俺の足跡が響く。
『タッタッタッタ・・・』
静かな夜だった。

『タッタッタッタッ・・・』
ん?
『タッタッタッタ・・・』

俺の足音以外に違う足音が聞こえる。
後ろを振り向いた。
暗くて見えないが誰もいない。気のせいか。
ナンダカンダ言って俺は小心者だな、と思いながら再び走った。

『タッタッタッタッ・・・』
『タッタッタッタ・・・』
ん?誰かいる。

俺はもう一度立ち止まり、目を凝らして後ろを眺めた。
・・・やっぱり誰もいない。
確かに俺の足音にマジって、後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえたのだが?
俺も淳のように、自分でも気付かないうちに、精神的に『中年女』追い詰められているのか?
ビビり過ぎているのか?
しばらく立ち止まり、ずーっと後ろを眺めた。

ドックンドックン鼓動を打っていた心臓が、一瞬止まりかけた。
15M程後方、民家の玄関先に停めてある原付きバイクの陰に、誰かがしゃがんでいる。
いや、隠れている。
月明かりでハッキリ黙視できないが、一つだけハッキリと見えたものがある。
コートを着ている!
しばらく俺は固まった。

隠れている奴は、俺に見つかっていないと思っているようだが、シルエットがハッキリ見える!
俺は一瞬混乱した。
中年女だ!中年女だ!中年女だ!中年女!中年女!
腰が抜けそうになったが、本能だろうか、次の瞬間、逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ逃げなきゃ!
と、もう一人の俺が俺に命令する。
俺は思いッキリ走った!運動会の時より必死に走った。風を切る音以外聞こえない程、無呼吸で走った。

無我夢中で家に向かって走った。
家まであと10M。
よし!逃げ切れる!

『!』

一瞬、頭にあることがよぎった。
このまま家に逃げ込めば、間違いなく家がバレる!
俺はとっさに自宅前を通過し、そのまま住宅街の細い路地を走り続けた。
当てもなく、ただ俺の後方を着いて来ているであろう『中年女』を巻く為に・・・

5分ほど、でたらめな道を走り続けた。
さすがに息がキレて来て歩きだし、後ろを振り向いた。
もう、『中年女』らしき人影も足音も聞こえて来ない。
俺は周囲を警戒しつつ、自宅方面へ歩き始めた。

再び自宅の10M程手前に差し掛かり、俺はもう一度周囲を警戒し、玄関にダッシュした。
両親が共働きで鍵っ子だった俺は、すばやく玄関の鍵を開け 中に入り、すばやく施錠した。
『フぅー・・・』
安堵感で自然とため息が出た。
とりあえず慎に報告しなければと思い、部屋に上がろうと靴を脱ごうとした時、玄関先で物音がした。

『!?』

俺は靴を脱ぐ体制のまま固まり、玄関扉を凝視した。
俺の家の玄関は、曇りガラスにアルミ冊子がしてある引き戸タイプなのだが、曇りガラスの向こう側に・・・
玄関先に誰かが立っている影が映っていた。

玄関扉を挟んで1M程の距離に『中年女』がいる!
俺は息を止め、動きを止め、気配を消した。
いや、むしろ身動き出来なかった。
まるで金縛り状態・・・蛇に睨まれた蛙とは、このような状態の事を言うのだろう。
曇り硝子越しに見える『中年女』の影を、ただ見つめるしか出来なかった。

しばらく『中年女』は、じっと玄関越しに立っていた。微動すらせず。
ここに俺がいることがわかっているのだろうか?
その時、硝子越しに、『中年女』の左腕がゆっくりと動き出した。
そして、ゆっくりと扉の取手部分に伸びていき、キシッ!と扉が軋んだ。
俺の鼓動は、生まれて始めてといっていいほどスピードを上げた。
『中年女』は扉が施錠されている事を確認すると、ゆっくりと左腕を戻し、再びその場に留まっていた。
俺は依然、硬直状態。

すると『中年女』は、玄関扉に更に近づき、その場にしゃがみ込んだ。
そして、硝子に左耳をピッタリと付けた。
室内の様子を伺っている!
目の前の曇り硝子に、『中年女』の耳が鮮明に映った。
もう俺は緊張のあまり吐きそうだった。鼓動はピークに達し、心臓が破裂しそうになった。
『中年女』に鼓動音がバレる!と思う程だった。

『中年女』は二、三分間、扉に耳を当てがうと再び立ち上がり、こちら側を向いたまま、ゆっくりと一歩ずつ後ろにさがって行った。
少しづつ硝子に映る『中年女』の影が薄れ、やがて消えた。
『行ったのか・・・?』
俺は全く安堵出来なかった。

何故なら、『中年女』は去ったのか?
俺がここ(玄関)にいることを知っていたのか?
まだ家の周りをうろついているのか?
もし、『中年女』に俺がこの家に入る姿を見られていて、俺の存在を確信した上で、さっきの行動を取っていたのだとしたら、間違いなく『中年女』は、家の周囲にいるだろう。
俺はゆっくりと、細心の注意を払いながら靴を脱ぎ、居間に移動した。

一切、部屋の明かりは点けない。明かりを燈せば、俺の存在を知らせることになりかねない。
俺は居間に入ると真っ直ぐに電話の受話器を持ち、手探りで暗記している慎の家に電話をかけた。
3コールで慎本人が出た。
『慎か?!やばい!来た!中年女が来た!バレた!バレたんだ!』
俺は小声で焦りながら慎に伝えた。
『え?どーした?何があった?』と慎。
『家に中年女が来た!早く何とかして!』
俺は慎にすがった。

『落ち着け!家に誰もいないのか?』
『いない!早く助けて』
『とりあえず、戸締まり確認しろ!中年女は今どこにいる?』
『わからない!でも家の前までさっきいたんだ!』
『パニクるな!とりあえず戸締まり確認だ!いいな!』
『わかった!戸締まり見てくるから早く来てくれ!』

俺は電話を切ると、戸締りを確認しにまずは便所に向かった。
もちろん家の電気は一切つけず、五感を研ぎ澄まし、暗い家内を壁づたいに便所に向かった。
まずは便所の窓を、そっと音を立てず閉めた。
次は隣の風呂。
風呂の窓もゆっくり閉め、鍵をかけた。
そして風呂を出て、縁側の窓を確認に向かった。
廊下を壁づたいに歩き、縁側のある和室に入った。

縁側の窓を見て違和感を覚えた。
いや、いつもと変わらず窓は閉まって、レースのカーテンをしてあるのだが、左端・・・人影が映っている。
誰かが外から窓に顔を付け、双眼鏡を覗くように両手を目の周辺に付け、室内を覗いている。
家の中は電気をつけていない為、外の方が明るく、こちらからはその姿が丸見えだった。
窓に『中年女』が、ヤモリの如く張り付いている。
俺は腰が抜けそうになった。

これは動物の本能なのだろうか?
肉食獣を見つけた草食動物のように、俺はとっさにしゃがみ込んだ。
全身が無意識に震えていた。
『中年女』からこちらは見えているのか?
『中年女』はしばらく室内を覗き、そのままの体勢で、ゆっくりと窓の中心まで移動して来た。

そしてキュルキュルキュルと、嫌な音が窓からしてきた。
『中年女』の右手が窓を擦っている。左手は依然、目元にあり、室内を覗きながら。
キュルキュルキュル
嫌な音は続く。俺の恐怖心はピークに達した。
何かわからないが、『中年女』の奇行に恐怖し、その恐怖のあまり、声を出す事すら出来なかった。

すると『中年女』は後ろを振り返り、凄い勢いで走り去って行った。
俺は何が起きたかわからず、身動きも出来ずに、ただ窓を見ていた。
すると窓の向こうの道路に、赤い光がチカチカしているのが見えた。
「警察が来たんだ!」
俺は状況が飲み込めた。
偶然通りかかったパトカーに気付き、『中年女』は逃げて行ったんだと。

しばらく俺はしゃがみ込んだまま震えていた。
プルルルルル!
その時、電話が突然鳴った。もう心臓が止まりかけた。
ディスプレイを見ると、慎の自宅からの電話だった。

俺は慌てて電話に出た。
『どう?』
『なんか部屋覗いとったけど、どっか行った・・・』
『そっか、親帰って来たんか?』
『いや、たまたまパトカー通って、それにビビって中年女逃げたんや思う』
『そーなんや!良かった。俺、お前んちの近くに不審者がいるって、通報しといてん。でも、あいつに家バレたんやったら、そろそろ親にも相談しなあかんかもな・・・』
『・・・』
『俺も今日、親に言うから・・・お前も言えよ!もうヤバイよ!』
『・・・うん・・・』
そして電話を切った。

その30分後、母親がパートから帰って来た。
俺は部屋の電気を消したまま玄関に走り、母の顔を見た瞬間、安堵感からか泣き出した。
母親はキョトンとしていたが、俺はしばらく泣き続けた後、『ごめんなさい』と冒頭に謝罪をし、『あの夜』の出来事から、さっきの出来事まで説明した。
説明の途中に父親も帰宅し、父には母が説明した。

その後、父が無言で和室の窓硝子を見に行った。
窓硝子は、鋭利な何かで凄い傷が付けられていた。
鋭利な何かが五寸釘だと、直感でわかった。
両親は俺を叱らず、母親は俺を抱きしめてくれ、父は警察に電話をかけていた。

10分程してから警察が来た。
警察には父が事情を説明していた。
俺は母親と居間にいたが、少ししてから警官が居間に来て、あの夜の事を聞いてきた。
ハッピーとタッチの事、木に釘で刺された少女の写真の事、淳の名前が秘密基地に彫られていたこと・・・

その後、放課後に出会った事など、『中年女』に係わる全ての事を話した。
そして、さっきの出来事も。
鑑識らしき人も来ていて、俺が話している間に窓の指紋を採取していた。
俺が話した内容で、警官がもっとも詳しく聞いてきたことが、少女の写真の事だった。
その少女の容姿や面識の有無等聞かれたが、それについては『よく分からない』と答えるしかなかった。
そして裏山の地図を書かされ、翌日、警察が調べに行くと言う事になり、自宅周辺の夜間パトロール強化を約束して、警察官は帰っていった。
結局、指紋は出なかった。

しばらくして、慎と淳の親から電話がかかってきた。
親同士で何やら話していたが、『中年女』に関する話というより、学校にどのように説明するかを話していたようだ。

その夜、俺は何年かぶりに両親と共に寝た。
恥ずかしさなど微塵も無く、純粋に『中年女』が怖く、なかなか寝付け無かった。

次の日の朝、母親に起こされた時には、すでに午前8時を回っていた。
『遅刻する!』と慌てると、母が『今日は家で寝てなさい』と言う。
どうやら既に学校に事情を話したらしい。
父はすでに出社していたが、母はパートを休んでいた。

慎や淳も今日は学校を休んでいるだろう・・・と思ったが、あえて電話はしなかった。
慎は恐らく、厳格な両親に怒られている。
淳の両親は、不登校になった淳の真実を知りショックを受けている。
と思うと、電話するのが恐かったから。

俺は自室に篭り、『中年女』が早く警察に捕まることだけを願っていた。
一時も早く、追い詰められる恐怖から解放されたかった。
母親は何故か、『中年女』の事を口にしてこなかった。
俺への気配り?と思い、俺も何も言わなかった。

昼飯を食べ、ふたたび自室に篭っていると、ドスっと家の外壁に鈍い音が響いた。
俺はとっさに、慎だ!と思った。
あいつは俺を呼び出す時、玄関の呼鈴を鳴らさず、窓に小石を投げてくる事がしばしばあったからだ。

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